「高額療養費制度」見直し案
今日も年金、社会保障の報道がいくつかありました。その中でも現役若年層にも(珍しく?)メリットのありそうな話についてひとこと。
2011/10/13 日経朝刊 経済面 ———
厚生労働省は12日、所得などに応じて医療費の患者負担に上限を定める「高額療養費制度」の見直し案を社会保障審議会に示した。従来の月額上限に加えて年間での上限も設定。年収が300万円から800万円程度の世帯の場合、50万1千円が上限となる。がんなどで治療が長期間にわたる患者の負担を和らげる。
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高額療養費制度とは、病院の窓口で支払う一部負担金(掛かった医療費の1割~3割)に上限を設けるもので、現行、70歳未満の場合①一般、②上位所得者(サラリーマンの加入する健康保険なら月給53万円以上の人)、③低所得者と3段階に区分されており、一般所得者であれば、「80,100円+(掛かった医療費-267,000円)×1%」が1ヶ月の負担上限となります。加えて多数回該当と言って、この高額療養費の支給要件に1年間で3回以上該当した場合は4回目からさらに負担を軽減する措置があります。①一般であれば定額の44400円となります。民間の医療保険などに加入・見直しを検討する際には是非頭に入れておいてもらいたい制度です。
今回提出された見直し案では、この「一般」の区分を3つに分けて年収300万円以下の区分で44000円とし、上記の(掛かった医療費-267,000円)×1%の加算を全区分で廃止、さらに年間上限を設け年収300万~800万で50万1千とするというものです。
年収300万円と言えば、20-30才代若年単身層にも恩恵がありそうです。
その一方、今回の制度の財源は3600億円程度が必要で、厚労省は現在、導入を検討している外来窓口定額100円負担で賄うと説明していますが、医師会を中心に反発が多く、毎年1兆円のペースで膨張を続ける医療費の抑制策を示さないで給付だけ拡充するというのも不安ではあります。
制度解説のところでさらっと触れましたが、この制度は70歳未満が対象で70歳以上には別テーブルで負担軽減制度があります。そうなるとあくまでこれから年金をもらう60-70歳の高齢者層を向けの政策なのかもしれません。結局は膨張する医療費の負担を現役に押し付けているだけなのかもしれません。
ちなみに、この高額療養費は基本は一旦窓口で医療費の全額を支払い後から申請して差額を還付してもらうことになるのですが、事前に保険者に申請して「限度額適用認定証」の交付を受けていれば自己負担限度額までの支払いでよくなります。(70歳以上なら申請不要)。また食事代や個室代(いわゆる差額ベッド)などは高額療養費の対象になりませんのでご注意下さい。
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