年金夫婦分割案
先週は年金絡みの報道がいくつかありました。10月9日付け日経新聞で報道されました年金夫婦分割の厚労省案についてひとこと。
厚生年金に加入している夫を持つ専業主婦(いわゆる国民年金の3号被保険者)は、年金保険料を収めず(一定の年収130万円未満であればという条件は付きます。)に老齢基礎年金の満額を受給することができます。これがもし夫が自営業であれば毎月15,020円(平成23年度)納めなければなりません。また独身女性であれば自分で厚生年金や国民年金など何らかの年金制度に加入して保険料を負担しなければなりません。
では、この専業主婦の年金は誰が負担するのかと言えば、厚生年金から「基礎年金拠出金」という形で負担しています。
要は事業主であったり、独身サラリーマンが肩代わりして負担していると言う訳です。これがいわゆる「不満」の根本です。
それで今回の分割案ですが、負担や年金額には何ら手を加えずに、専業主婦が保険料を納付したとみなして夫の厚生年金(報酬比例部分)を半分こして主婦に支給するという趣旨だそうです。私のような法律屋や大学などで法律を学んだ方なら「みなして」(漢字だと「見做す」・・・法律上そういうものだと認めること、主婦は保険料払ってないけど払ったことにしますよ、ということ)の強い意味が確かに理解できるところですが、いわゆる庶民感覚でいえば「?」に過ぎないでしょう。記事中に「まやかしとの批判の声が上がる」と書かれていますがもっともな話です。
厚生年金の制度が始まったのは昭和17年(但し当時は現業男子のみで事務職や女子に拡大されたのは19年)、そもそも当時の厚生年金には1世帯1年金という考え方があり、昭和36年の国民年金発足後も大改正が行われる61年まで厚生年金の妻は国民年金に任意加入となっていました。しかしそれでは障害や離婚など夫の年金を頼りにできなくなった時のため女性の年金権を確立するという目的で、この3号被保険者の制度が導入されました。
根底にこのような考え方があるので中々議論が進まないところですが、すでに50年以上も経過した発想であること、これだけ世界的にも女性の社会進出を促す世論が形成され、夫婦共働きが当たり前の時代となった今再考が必要だと私は考えます。
記事中専業主婦世帯は減り続けとあるものの、この3号被保険者は厚労省の年金統計情報、事業月報によると平成23年6月現在999万人となっています。
※主婦、主婦となっていますが、法律上は厚生年金等の被保険者の配偶者なので会社員の妻、主夫世帯の主夫でも3号被保険者となります。
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